放送開始から45年、「北の国から」の“こごみ”が令和の若者に再発見される理由と富良野の現在地
北 の 国 から こごみという響きに、昭和から平成を駆け抜けたテレビファンなら誰もが胸を熱くするはずだ。名作ドラマ『北の国から』で黒板五郎の心を揺さぶったあのミステリアスな女性キャラクターと、北海道の厳しい冬を越えて芽吹く山菜の生命力が、2026年の今、SNSを中心に全く新しい文脈で脚光を浴びている。
かつてお茶の間を魅了したあの切ない恋愛模様から数十年が経過した現在、富良野を訪れる若者たちの目的はロケ地巡りだけにとどまらない。実は、劇中で象徴的に描かれた北 の 国 から こごみのルーツをたどり、現地の自然食カルチャーを体験するエコツアーが異例のヒットを記録しているのだ。
2026年の富良野で起きている「昭和レトロ」の地殻変動

北海道・富良野。かつて黒板五郎が泥臭く生きたあの土地に、今、アジア圏を中心としたインバウンドと国内のZ世代が殺到している。彼らの目的は、単なる観光ではない。スマホを置き、五郎のように不便さを楽しむ「アクティブ・アナログ」な旅スタイルがトレンドなのだ。
地元観光協会の担当者は「かつてはシニア層が中心だったロケ地巡りが、完全に若年層のカルチャーにシフトしている」と語る。その中心にあるのが、劇中に登場する数々の「食」と「人間ドラマ」の再解釈だ。
五郎の人生を狂わせた?「こごみ」というキャラクターの多面性

『北の国から ’83冬』で初登場したこごみ(清水こごみ)は、どこか陰のある魅力で五郎を翻弄した。純と蛍の母親代わりになろうと葛藤する彼女の姿は、当時の視聴者に強烈な印象を残している。
「単なる悪女でも、聖女でもない。あの時代の地方都市で懸命に生きる一人の女性のリアルが詰まっていた」と、ドラマ批評家は分析する。2026年の現代、ジェンダー観の変化とともに、彼女の自立した生き方や葛藤に共感する声がネット上で再燃しているのは興味深い現象だ。
なぜ今、若者は山菜としての「こごみ」に惹かれるのか

一方で、春の味覚である山菜の「こごみ」自体も、健康志向の高い現代人の心を掴んでいる。富良野の雪解け水で育つこごみは、アクが少なく食べやすい。これがヴィーガンフードやオーガニック食材としてSNSでバズったのだ。
「五郎さんが食べていたものを、自分たちも収穫して食べてみたい」。そんな素朴な憧れが、現地での山菜採りワークショップの予約を数ヶ月待ちにするほどの人気ぶりに押し上げている。自然の恵みをそのままいただく贅沢が、タイパを重視する現代社会へのアンチテーゼとなっているのだろう。
聖地・アサミズの跡地から発信される新しいローカルビジネス
かつてこごみが働いていたスナックのモデルとなった場所や、富良野市内のロケ地周辺では、新たな動きが活発化している。地元の若手起業家たちがタッグを組み、ドラマの世界観を追体験できるゲストハウスやカフェを次々とオープンさせているのだ。
ここでは、地元産のこごみを使った天ぷらや、当時のレシピを現代風にアレンジした創作料理が提供されている。過疎化が進む地方都市において、過去の文化的遺産が新たな経済の起爆剤となる好例と言える。
デジタルデトックスと「北の国から」が融合する未来
情報過多の現代において、倉本聰氏が描いた「文明への問いかけ」は、かつてないほど現実味を帯びて私たちに迫ってくる。電気がない、水がない、しかしそこには確かな人間の営みがあった。
富良野の森の中でこごみを摘み、火を起こして食べる。そんなシンプルな体験が、現代人のすり減った心を癒やす特効薬になっている。ドラマが遺したメッセージは、形を変えながらも、次の世代へと確実に受け継がれているのだ。 (出典: 北 の 国 から こごみ(Yahoo!ニュース))